住宅ローン審査と「賃料のヒミツ」

賃料相場と
売買価格の
関係性


不動産の売買価格や住宅ローンの融資額(ここでは、「居住用のマンションや戸建て」とする。)は、どの様にして決定しているのか?

筆者は、不動産の取引(仕入=買主、販売=売主)を始めて、ちょうど10年が経とうとしています。

過去に売主として、筆者が担当で販売し、ご購入いただいた物件(9割はマンション)の数は、おおよそ300件。

筆者がマネージャーを務めて、責任者としてメンバーの販売物件を管理した件数を含めると、おおよそ700件ぐらいです。

又、買主として購入を検討した物件の数は、10,000件を超えました。(令和3年8月現在)

これまでに、私が関わる不動産をご購入いただいた方や売却のご相談をいただいた方、
誠にありがとう御座います。

その経験を踏まえて、売買の価格はどの様にして決定しているのか?

その価格に最も影響を与える事は何か?

具体的に、分かり易く掲載しようと思います。

関係性

住むための部屋を購入する時に、価格面で考慮すべき最も大切なことは、その場所、その物件の「賃料相場」です。

「賃料相場」とは、一般的に賃貸募集した時に借り手が付く、おおよその賃料の事です。

通常は、どの物件にも、賃料の想定というのがあります。

不動産屋さんが賃貸の募集をする時には、想定賃料を計算してから、オーナー様(大家さん)と相談して、募集する賃料を決めます。

賃料を決定する時には、周辺の募集物件との比較(対抗物件)を最も重要視しています。

物件によっては、内装を原状回復している場合やリノベーションして作り変えている場合もありますので、大家さんとしては、その費用分を賃料に上乗せする場合もあります。

あくまで、「需要と供給のバランス」が大切ですので、大幅に賃料相場よりも高い募集であったり、内装に見合わない賃料やリフォームの程度が悪い物件などは、募集しても借主様が付かないため、値下げをする場合もあります。

では、何故? 売買価格に影響を及ぼすかというと、「住宅ローン」が関係します。

ここで、一つ想像してください。

現在、賃貸でお住まいの方は、「ご自身の現在の賃料」を、

現在、住宅ローンを支払っている方は、月の返済額とその他ランニング費用(管理費・修繕積立金や固都税の1か月分など)の「合計額」を。

先ずは、賃貸中の方から。

もし、住宅ローンの借り入れをして、月々の返済額が、今の賃料と同額の場合、購入を検討しますか?

この場合は、筆者はお勧めしません。

購入した場合、「賃貸では発生しない支払い」が発生します。

マンションの場合は、管理費・修繕積立金・その他月額費用、固定資産税など、面積に応じて高くなります。

戸建ての場合は、固定資産税など(マンションよりも高くなる場合が多い)。

そして、物件の維持管理費用(破損・汚損・火災などの負担や火災保険料など)が発生します。

そのため、今の賃料と同額の返済額の住宅ローンで購入した場合は、支払い総額が思ったより増えます。

普段から、賃料の支払いに余裕がある方でしたらの良いのですが、そうでない方にとっては死活問題ですね。

ただし、住宅ローンを借り入れする場合は、35年(今は40年もある)の長期間借入が可能ですので、月々の返済額は借入額に対して少なく感じると思います。(金利が低いローンのため)

又、住宅ローンの借り入れには、団体信用生命保険への加入が必要(不要の金融機関もある)ですので、ご自身に不測の事態が生じた場合は、借入金が0円になるため、生命保険としての側面もあります。
*今は、団体信用生命保険に、ガン特約や8大成人病特約なども付加できますし、ガン特約を無償で付保している金融機関もあります。

その他に、住宅ローン減税という税制優遇(諸条件・締め切り時期あり)を受けられる場合は、ザックリ計算で、
2000万円の借り入れで、10年間総額で最大約180万円(年18万円・月1万5千円)ぐらいの所得税の減税があります。

*本当にザックリ計算です。(金利・借り入れ額・年数により大きく変動するため)

賃貸から売買を検討する時は、ご自身の、「そもそもの、収入に対する支出形態を組み替える」作業をして、検討する物件や地域をセレクトすると、無理なく良い物件に出会える可能性が高くなります。

少し話は逸れましたが、賃貸中の方が購入を検討する時は、「今の賃料」を基準として購入価格を検討する事が圧倒的に多いです。

という事は、販売物件が所在する地域の賃料相場が、その地域の基本的な売買価格を決定する要因となるのです。


ここで、一息・・・

次は、持ち家で住宅ローンを返済中の方。

こちらは、将来的には転居する(売却する・賃貸に出す)予定がある方や購入したいけど転居する可能性が心配な方が対象です。

もし、現在、ご自身が支払い中の居住費用(住宅ローン返済月額、管理費等、固定資産税など)の総額で、その部屋が賃貸募集されていた場合、賃貸で入居しますか?

現在お住まいの地域には、基本的な賃料相場がありますので、その相場と大きくズレている(高い)場合は、転居するタイミングを少し遅らせる事も対策の一つです。

*住宅ローンの残債(借入残高)を減らして、売却も視野に入れるとか、内装の程度を良くするために、リフォーム費用を貯金するとか。

もし、今のお部屋を賃貸に出す場合は、当然、内装が住める状態(ある程度回復されている状態)が前提として、その賃料で入居してくれる方がいるのか? という事を考える必要があります。

ご自身が転居したとしても、賃貸募集後に賃料の入金があるまでの間は、ローンの返済・管理費等や固定資産税などの支払いは発生します。

転居後には、転居先の支払い(賃料など)も発生しますね。

そのため、できる限り早く賃料を受領できる方が、金銭面で安心だと思います。

できる限り早く賃借人に入居してもらうには、それなりの賃料である必要があり、相場よりも高い賃料で募集する場合は、内装のリフォームなど、追加出費が発生します。

もし、売却を検討する場合でも、そのお部屋の購入を検討する方は、その方の現在の賃料と比較しますので、結果は同じです。

ただし、購入希望者の方は、広範囲で検討される方もいらっしゃいますので、賃貸募集や売却の期間に、比較的余裕を持てる場合は、ご希望に近い状況になり易いです。

住宅ローンの
審査

住宅ローンの審査には、いくつか基準があります。

その中の一つ「返済比率」をご紹介します。

「返済比率」とは、ご自身の年収(税込)(*ただし、個人事業主の方は実収入。)に対して、借入金の年間支払い総額の上限値が設定されます。金融機関や年収額にもよりますが、概ね30%前後です。

(例)年収500万円の方 → 30% = 150万円

年収500万円の方は、年間150万円までは、「借入金の返済ができる方」という審査になります。

これは、全ての借入金の返済額合計ですので、車(カーローン)やその他の返済の合計額になります。

(注:有利子の借入金返済です。無利子の奨学金などは除外される場合があります。)

金融機関は、この「返済比率」によって、人それぞれに貸し出し可能な額を計算しています。

この計算は、この方が、「もし賃貸だった場合に支払う事が可能な範囲」を算出しています。

賃貸で支払う事が可能な範囲 = ローンの返済が可能な範囲 という事です。

金融機関は、「貸したお金を全額返済してもらう事が前提」として融資をします。

又、貸し出すお金の原資は、預金者のお金であったり、投資家さん(ノンバンク)のお金です。

そのため、「より安全に」とう考え方がありますので、絶対に超える事のない基準なのです。

ただし、人それぞれ、「そもそもの信用度」に違いがあります。(勤め先や勤続年数、年齢など様々な要因)

その「信用度の差」は、金利に現れますので、同じ借り入れ状況で、同じ年収の方でも、借り入れできる総額に違いがあります。

信用度が高い = 金利が安い とう構図です。(返済リスクの度合い = 金利)

(例)Aさん、年収500万円、返済比率30%、借入2000万円、35年返済、金利0.975% だった場合、

月の返済額:56,224円(元利均等)*返済比率はOK

(例)Bさん、年収500万円、返済比率30%、借入2000万円、35年返済、金利1.800% だった場合、

月の返済額:64,218円(元利均等)*返済比率はOK

では、何故? 金融機関はこの様な基準を設けているのでしょうか?

理由の一つとして、「より安全に」の項目で、「万が一返済が滞った場合」を考慮する必要があるからです。

「万が一返済が滞った場合」は、当然、その物件を売却して融資金を回収する必要がありますので、売却する時に購入してもらえる金額(賃料との比較の問題)である必要があります。

又、この方が賃貸に移り住む場合でも、「支払い可能な賃料」の物件に引っ越ししてもらう必要があります。

先に記載した「関係性」の内容が、ここにも反映されているのです。

この様に、販売価格や住宅ローンの融資額は、ある側面では「賃料」を基準としているのです。


最後までお読みいただき、誠にありがとう御座います。

不動産の売買と賃貸は、「相関関係」があります。その原因は「住宅ローン」です。

その関係性によって、色々な事が組み立てられていますので、今後の「住み方」の参考にして頂けますと幸いです。

この連載の最初に、「賃貸 or 売買」を投稿していますが、どちらが良いという事ではありませんので、お時間が御座いましたら、そちらも是非ご拝読ください。

「住み方」を考える No1 「賃貸 or 売買」

次回は、新築マンション(居住用・投資用)の売買価格の決定を書こうと思います。

これも、賃料と密接な関係がありますし、新築の投資マンションは賃料と「因果関係」があります。

お時間がありましたら、是非ご拝読ください。

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